「避難所は「ホテル」ではなく、被災者は「お客様」ではない」
世界的な人道支援の物差しである「スフィア基準」。
日本でも耳にする機会が増えましたが、多くの場合「トイレは〇人に1基」「1人あたりの広さは〇畳分」といった数値のカタログとして紹介されがちです。
その結果、いつの間にかこんな構図が生まれてはいないでしょうか。
住民側: 「国際基準のサービスが用意されていない」と行政を責める
行政側: 「できる限りのことはしているのに」と住民対応に追われ疲弊する
しかし、これは例えるなら、難破しかけている船の上で、乗客が「食事が遅い」「部屋が狭い」と船長にクレームを言い続けているようなものです。本当の大規模災害では、道路も通信も途絶し、行政職員という「船員」すら現場にたどり着けません。
スフィア基準が本当に伝えているのは、「行政への注文票」の基準ではありません。「住民自身が船を動かすクルー(乗組員)になり、行政には外からの補給や大修理を担当してもらう」という、現場の役割分担の根本的な見直しです。
カタログの数字よりも大切な「チームの組み方」
もし災害が起きたとき、地域と行政が「注文する側」と「提供する側」という関係のままでいれば、現場は必ずパンクします。
本当に必要なのは、
地域の側が「いま何が必要で、何から手を打つか」の舵を自ら握ること
行政の側が現場の細かな運営を抱え込まず、専門技術や広域物流といった「外側の後方支援」に徹すること
つまり、自治会が現場の「設計図」を描き、行政には「足りない建築資材」を届けてもらう関係性へとアップデートすることです。
研修資料でお伝えすること
当プログラムで配布する資料『世界の避難における標準を考える』では、スフィア基準の小難しい条文をなぞることはしません。
なぜ「行政任せ」でも「住民の丸投げ」でもうまくいかないのか?
混乱する初動から生活再建までのあいだで、地域と行政はそれぞれどのボタンを押すべきなのか?
現場の不満を「建設的な連携」に変えるための具体的なコミュニケーションとは?
「行政が来てくれないから何もできない」と立ち尽くすのではなく、地域が舵を握り、必要な支援を行政と協働して引き寄せる――。現場主導の持続可能な防災・復興のグランドデザインを描くための道標として、本研修プログラムで配布しています。
行政や自治会の現場では、住民からの意見や要望への対応、そして災害時の連携において、まさにこうした課題を多く抱えていることと思います。行政と地域が対立することなく、対等なパートナーとして支え合うための共通認識を育む一助になれば幸いです。