能登半島地震から2年が経ちました。奥能登(珠洲市・輪島市・能登町・穴水町)では、今もなお多くの方が自宅の再建に踏み出せずにいます。その背景には、「土地は安い、でも家を建てるお金が足りない」という深刻な構造があります。
土地の価格~全国の10分の1以下
珠洲市の住宅地の公示地価(2025年)は、坪あたり約3万円前後。全国平均(坪17万円台)と比べると、10分の1以下の水準です。中古の戸建て住宅も、100~500万円台で流通しているケースが多く、土地や家屋の取得コスト自体はきわめて低い状態です。
輪島市でも公示地価は坪7~8万円台と、都市部と比べれば大幅に安価です。
建築費の現実~震災前の1.5倍以上
ところが、家を新しく建てようとすると話は全く変わります。
地震前、奥能登での住宅建築費は坪単価70~100万円ほどでした(珠洲商工会議所・地元住民証言)。それが震災後には120~150万円に跳ね上がり、地元の金融機関関係者は「実態は140~150万円」とも話しています。
値上がりの主な原因は3つです。
- 資材費の高騰~生コンクリートは震災直前から約3割値上がり
- 人件費の上昇~大工の日当が「2万~2万3千円」から「2万5千~3万円」へ
- 遠隔地割増~金沢から片道2時間以上かかる奥能登では、1棟あたり150~250万円の割増が発生するケースも
全国平均の建築費上昇率が約12%(2年間)なのに対し、奥能登では2~8割の上昇と、突出した高騰が続いています。
ここに、2026年から深刻化している「ナフサ危機」が重なり、建築資材のさらなる高騰と品薄が住宅再建を一段と難しくしています。
ナフサ危機が追い打ちをかける建築資材高騰
中東情勢の悪化によりホルムズ海峡が事実上封鎖され、日本が大きく依存している石油化学原料「ナフサ」の供給に深刻な不安が生じています。
ナフサは、断熱材、塩ビ配管、樹脂サッシ、床材、壁紙、塗料、接着剤・シーリング材など、多くの建築資材の原料になっています。
その結果、
- 住宅用断熱材が約40%値上がり
- 建築用シンナーや塗料が最大75~80%高騰
- 断熱材・配管・塗料などで出荷制限や受注停止が発生
といった事態が全国的に広がっています。
すでに生コンクリートや人件費の高騰で坪単価が震災前の1.5倍以上に跳ね上がっている奥能登では、ナフサ由来資材の追加値上がりと納期遅延が、さらに見積もり金額を押し上げる要因となっています。
都市部以上に物流コストがかかる奥能登では、品薄資材の調達そのものが難しくなり、
- 「そもそも使いたい断熱材が入ってこない」
- 「ユニットバスや設備機器の納期が見えない」
といった声も現場から上がりはじめています。
「ナフサ危機」は、単なる一時的な値上がりではなく、資材不足と工期遅延を通じて、能登で家を建てようとする人たちの心理的ハードルをさらに高める新たなリスクになりつつあります。
支援金との「大きなギャップ」
国や県の支援制度を最大限に活用しても、新築・購入への支援は最大1,060万円(2026年時点)。一方で、20~30坪の平屋を建て直すと、遠隔地割増を含めれば3,000~5,000万円規模になることも珍しくありません。
「20坪程度の平屋を想定し、1,500万円くらいと見込んでいたところ、見積もりが来たら2,300万円を超えていた。しかもそれは金沢での価格で、能登への移動費は別」~そんな声が被災地では相次いでいます。
支援金の上限と実際の建築費の差は、2,000~4,000万円に及ぶことがあり、これが再建をためらわせる最大の壁になっています。
「戻りたい」気持ちと、現実の壁
土地への愛着も、地域に残りたい意志や故郷に戻りたい気持ちは多くの方が持っています。にもかかわらず、建築費の高騰という「目に見えにくい壁」が、故郷を遠くしているのが現状です。
リブート珠洲では、こうした実態を広く伝えながら、地域に戻ろうとする方々の活動も見守っていきたいと思います。
