能登半島地震では、多くの家屋が倒壊し、避難所も不足する中、車中泊で避難生活を送られた方々が少なくありませんでした。災害大国日本において、移動手段だけでなく「命を守るシェルター」として車を活用する視点が、今後の防災において重要になっています。災害時に車をシェルターとして活用するための実践的な知識と準備について考えます。
私は趣味でマイクロバスをキャンプ用にDIYしていました。行き場を失った家財など荷物があふれ、小屋などが確保できなかったので、輸送以外にも小屋や部屋スペースとしての活用ができました。マイクロバスを一般ご家庭に持つことは難しいですが、自家用車をお持ちの場合は避難生活や防災グッズの一つとして考えるだけでも効果的です。
車がシェルターとして果たす可能性
住宅が倒壊しても、車が無事であれば、それは貴重な「個人の避難所」となります。能登半島地震の被災地では、避難所の収容人数に限りがある中、車中泊が多くの方々の命と尊厳を守る選択肢の一つとなりました。
車をシェルターとして活用する主な利点:
– プライバシーが確保できる個人的な避難空間になる
– ペットと一緒に避難できるため、避難所に行けない方の選択肢になる
– 冬は暖機能、夏はエアコンで体温調節が可能
– ラジオやカーナビを通じて情報収集ができる
– シガーソケットやUSBでスマートフォンなどの充電が可能
– 必要に応じて移動できる機動性を持つ

車中泊避難を安全に行うための準備
日常から準備しておくべきこと
– 車内に常備しておくもの:
– 飲料水(1人1日3L、最低3日分)
– 非常食(調理不要のもの)
– 携帯トイレ(1人1日5回×日数分)
– 防寒用ブランケット
– モバイルバッテリー
– LED懐中電灯
– 救急セット
– 簡易枕や車中泊用マット
– 定期的なメンテナンス:
– 燃料は常に半分以上を保つ習慣をつける
– タイヤの状態確認
– バッテリーの定期点検
– 車載工具の確認

エコノミークラス症候群を防ぐ対策
車中泊により生じるエコノミークラス症候群には以下の対策が重要になります:
– 2時間ごとに足を動かす、車外に出て軽い運動をする
– 水分をこまめに摂取する
– 就寝時は足を心臓より高い位置に保つ
– 圧迫の少ない服装で過ごす
– リクライニングシートを活用して横になれる姿勢を確保する
車中泊避難での生活の工夫
電源確保の方法
– アイドリングでの発電(※燃料消費とCO中毒に注意)
– ソーラーパネル充電器とポータブル電源の活用
– 車載インバーターでAC電源を確保
– 非常用発電機(屋外で使用、騒音に注意)
車内を快適に過ごすための工夫
– 車内の整理整頓と区画分け(生活空間と荷物置き場を区分)
– 断熱材やサンシェードでの断熱対策
– 窓の網戸代わりになるメッシュカーテン(換気と防虫)
– カーテンやフィルムでプライバシー確保
– 折りたたみ式のテーブルや椅子で車外空間の活用


能登半島地震からの教訓
能登半島地震では車中泊を余儀なくされる中で、以下のような教訓も得られました:
– 車中泊避難者のための支援ステーションの必要性
– 地域で車中泊場所を事前に確保・計画しておくこと
– 車中泊の方にも支援物資が行き届く体制づくり
– エコノミークラス症候群予防の啓発活動
– トイレ・洗面所など衛生施設へのアクセス確保
日常からの訓練と準備
車をシェルターとして最大限活用するためには、日常からの訓練が欠かせません:
– 家族でのキャンプや車中泊体験を通じたノウハウの蓄積
– 定期的な車中泊避難訓練(季節ごとに異なる対策を学ぶ)
– 地域コミュニティでの車中泊避難計画の策定と共有
– 車中泊に適した駐車スペースのマッピング
長期の車中泊まで想定する場合、車外空間を使うことができるスペースがあればキャンピングテントの併用はストレスを軽減させる有効な手段になります。
地域で考える車中泊避難の可能性
個人の備えだけでなく、地域として車中泊避難を支援する取り組みも重要です:
– 災害時に開放できる安全な駐車スペースの確保
– 車中泊避難者向けの支援ステーション設置計画
– 避難所と車中泊エリアの連携体制
– 自治会単位での車中泊避難訓練の実施
災害時、車は単なる移動手段ではなく、命を守る「動くシェルター」となります。日常から車中泊の経験を積み、必要な装備を整えながら、いざという時の知識を身につけておきましょう。あなたの車が、あなたとご家族の命を守る砦になるかもしれません。
今週末、ご家族で車中泊を試してみませんか?その経験が、いつか訪れるかもしれない災害時に、大きな力となるはずです。